【都市計画】【ドイツ発】一石四鳥の省エネ・プログラム
フライブルク市で実施されている「省エネチェック・フライブルク」の中間報告が公表された。
2008年10月から実施されているアクション・プログラム「省エネチェック・フライブルク」は、地域雇用促進協会(NPO法人、略称VABE)と教会系の雇用促進協会が中心となり、フライブルク市、ハローワーク、そしてこの地域の第三セクターの電力事業者であるバーデノヴァ社が支援している。
このプロジェクトは、"一石二鳥"どころか"一石四鳥"の取り組みとなっている。概要は以下の通り。
1.
長期失業者に対して、省エネチェックや省エネコンサルティング能力がつくように教育を行なう。
[1羽目の鳥]:実際に、昨年から14名の長期失業者の方々が教育プログラムを修了しており、そのうち3名はそのまま地域の企業に就職が決まった。
2.
教育を受けた省エネ診断士が、市内の社会福祉や長期失業手当を受給している低所得者層の家庭を訪問し、省エネに対するアドヴァイスや診断、そして省エネ対策を無料で行なう。バーデノヴァ社のイノベーション基金(*1)から捻出された14万ユーロ(およそ1,800万円)によって、省エネ電球、スイッチ付きのテーブルタップ、そして節水コマと節水型シャワー口が購入され、無償提供されるのたが(1セットおよそ50ユーロ相当)、それらの設置と正しい利用方法についての指導も、省エネ診断士が行なう。
[2羽目の鳥]:実際に、昨年から10カ月間で143世帯を巡回し、省エネ診断と指導、そして省エネ機器の設置が実施された。これにより平均で、1世帯あたり74ユーロ/年(およそ1万円)の光熱水道費が削減され、低収入層の家計収支を緩和することができた。
[3羽目の鳥]:この取り組みによってすでに23トンのCO2の削減が実施され、貴重な化石・ウラン燃料が節約された。
[4羽目の鳥]:このプログラムにフライブルク市は今年1万ユーロ(およそ135万円)の予算をつけて支援しているが(来年度以降は毎年5万ユーロ)、長期的には、この投資は回収される可能性がある。理由は、ドイツには、こうした低収入層世帯への住宅手当の支給があり、それは自治体予算からの支出で行なわれているからで(現在はおよそ9,000世帯へ支給中)、住宅手当の算定基準であるランニングコスト(光熱水道費)の低下がそうした世帯において見られれば、その住宅手当支給額も低下する傾向を見せるはずだからであり、それは長期的に持続される。
このように、失業者対策を単なる支出とみなすのではなく、環境保護と関連させることで利益を生み出すプロジェクトは、近年、様々な自治体で規模は小さいながら続々と生み出されている。
今年度以降も、毎年400世帯がこの省エネ診断+対策を継続する予定で、10年後にはほぼすべての低収入層の家庭で省エネチェックが完了すると環境担当のシュトゥーフリック副市長は語っている。そうなれば、毎年60万ユーロの光熱水道費が節約されることとなる。
啓発のためのパンフレット・チラシ製作やCO2家計簿などの製作で公的予算を使用している自治体が日本には数多くあるが、こうした抽象的なテーマにおいて、小さな予算規模であっても実行力を発揮できるのは、人間のコミュニケーション能力を動員した具体的な取り組みである。雇用対策との組み合わせでそれぞれの地域において、独自のこのような取り組みが行なわれることを期待したい。
(*注1)バーデノヴァ社のイノベーション基金
公的性格が強く、フライブルク市の影響力が及ぶこの企業では、一般電力価格の中にイノベーション基金を薄く上乗せして販売しており、集まった資金で、地域の再生可能エネルギーのパイロット・プロジェクトや公益の省エネ投資に活用している。
環境ジャーナリスト 村上 敦
http://murakamiatsushi.de/
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